アフターダーク2.0

2002-2003年にかけてテキストサイトヲチサイト「ダークマター」を運営していた濁の出涸らしブログ。基本、更新頻度低め。

山田風太郎賞は伊達じゃない!「ジェノサイド(高野 和明著)」感想

山田風太郎賞は伊達じゃない

三年前、第二回山田風太郎賞受賞作品という事で気になっていた小説、「ジェノサイド」を読了しました。

ジェノサイド 上 (角川文庫)

ジェノサイド 下 (角川文庫)

いやー、本当に面白かった。

カテゴリとしてはSFサスペンスもの何だろうけど、そういう枠に当てはまらないエンターテイメント小説。というか、簡単にジャンル分けしようとする事自体、自分の表現力の無さをさらけ出していると言えるよね。反省。

大胆な大嘘

個人的に現実的な世界の中に大胆な嘘を混ぜ込むタイプのSFが大好物。藤子・F・不二雄先生のSF短編がそれなんだけど、この小説がまさしくど真ん中。

物語中盤で明らかになるとあるギミック(大嘘)はSFの中ではありふれたネタなんだけど、この小説では考古学、人類学、政治学、医学、歴史学など、あらゆるガジェットを用意し荒唐無稽とは思わせない説得力を生み出している。現代社会を舞台としているだけに、本当に行われている出来事では無いかと錯覚するほど臨場感が抜群だった。

正直、序盤は医学用語が飛び交い少々退屈だったけど、ギミックが明らかになってから先は、物語が圧倒的に加速する。

この世の地獄と思わせる世界でのアクションシーンや、終盤に明らかになる意外な事実。

一気に読みきったよ。

難点は、臨場感を出すために持ち出しているであろうネタが、物語と別の部分で引っかかってしまう人も居るかなと。南京事件ネタとかね。

 

ただ、そういう難点は、素晴らしい物語の前では微々たるもの。

刺激的なSFを求めている人は、ぜひご一読を。